電子記録債権の譲渡(簿記2級)
電子記録債権は分割譲渡ができる
電子記録債権については、「電子記録債権とは?」でもやったね。
手形の電子版のようなものなんだよね。約束手形が今後廃止されることになってるから、その代わりになるものってことだよね。
そう。電子記録債権は手形と同じように、他人に譲渡することもできるよ。さらに、手形とは違って、金額の一部を分割して譲渡するということもできるんだ。
手形だと書かれた金額が決まってるから、その額で渡すしかなかったけど、電子記録債権は分割ができるんだね。
では、電子記録債権を譲渡するときの仕訳を確認していこう。
電子記録債権を譲渡する仕訳(仕入れに使った場合)
まずは売掛金1,000円を電子記録したときの仕訳をしてみよう。
(借方) (貸方)
では、この電子記録債権を別の会社への支払いに使った場合を考えよう。商品200円を仕入れて、電子記録債権200円を譲渡したとしよう。
電子記録債権を200円分だけ分割して渡すんだね。
(借方)(貸方)
そう。手形ではこのような一部だけの譲渡はできなかったけど、電子記録債権ならできるんだ。
電子記録債権の売却の仕訳(割引)
さっきの電子記録債権が残り800円分ある状態なんだけど、それを700円で売却して当座預金に預け入れた場合の仕訳をしよう。
100円損するってことだよね。差額はどう処理するの?
電子記録債権売却損を使おう。
電子記録債権を減らして、当座預金700を増やして、差額が電子記録債権売却損だね。
(借方) (貸方)
電子記録債権売却損 100
ちなみに、受取手形を期日より前に銀行で現金と交換することを手形の割引と言うんだけど、電子記録債権の割引というのが今やった仕訳だよ。
なんで割引って言うの?
期日より前だから、期日までの利息のぶんが割り引かれるんだ。手形の場合は手形売却損を計上するんだけど、電子記録債権の場合は電子記録債券売却損を計上するよ。
電子記録された貸付金の譲渡の仕訳
今度は貸付金の場合を考えよう。貸付金を電子記録した場合はどうなるか覚えてるかな?
貸付金の場合は電子記録しても電子記録債権勘定は使わず、貸付金のままになってるんだよね。
そう。貸付金や借入金は貸借対照表上、電子記録かどうかで分けずに、貸付金、借入金として表示するルールになっているから、電子記録したときも仕訳はしてないんだよ。
じゃあ貸付金を電子記録した電子記録債権を譲渡したときは、貸付金勘定を減らせばいいんだね。
そう。では、電子記録された貸付金500円を売却して現金400円を受け取った場合の仕訳をしてみよう。
売却損はどうすればいいの?
この場合は、貸付債権売却損を使おう。
じゃあ貸付金500を減らして、現金400増やして、差額が貸付債権売却損だね。
(借方) (貸方)
現金 400 / 貸付金 500
貸付債権売却損 100
電子記録債権についての補足
債務者側の処理
今回は、電子記録債権の譲渡ということで、債権者側の処理をやったけど、債務者側はどうなるか分かるかな。
買掛金や借入金が電子記録された場合だよね。買掛金を電子記録したら電子記録債務になって、借入金を電子記録したときはそのまま借入金として表示するんだよね。
債権者が電子記録債権を譲渡したときはどうなるかな?
債務者としては相手が変わるだけで、電子記録債務があることには変わりないんだよね。
そう。なので、債権者が電子記録債権を譲渡したときは債務者側では特に仕訳は必要ないよ。
営業外電子記録債権
売掛金を電子記録したら電子記録債権、貸付金を電子記録したらそのまま貸付金ということは分かったね。それ以外で、通常の営業活動に関係しない債権を電子記録した場合は営業外電子記録債権となるよ。
営業外ってなにがあるのかな。
固定資産や有価証券の売買に関わる債権があるよ。その場合は未収入金となっているから、未収入金を電子記録すると、営業外電子記録債権になるってこと。
債務者側は未払金を電子記録して営業外電子記録債務になるんだね。
その通り。電子記録債権を表す勘定が3通りあることが分かったかな。
まとめ
- 電子記録債権は手形とは違い、分割譲渡できるというメリットがある。
- 売掛金が電子記録された場合、電子記録債権勘定が使われているので、譲渡したときは電子記録債権勘定の減少となる。
- 貸付金が電子記録された場合、貸付金勘定のままになっているので、譲渡したときは貸付金勘定の減少となる。
- 電子記録債権が譲渡されたとき、債務者側では仕訳は不要。
- 未収入金、未払金が電子記録されたときは営業外電子記録債権、営業外電子記録債務となる。